歯科医になってから、歯の治療や予防治療、クリーニングなどをしっかりとおこなうだけでなく、もっとできることはないかと考えてきました。たとえば、食べ物がうまく噛めないときに、虫歯や歯周病だけが原因なのではなく、顔の筋肉のトラブルが起因している場合もあることに気づきました。噛み合わせが悪かったり、食いしばりのクセがあったり、痛い歯や欠損している歯をかばって片噛みをしていたりしたために、顔の筋肉に不均衡が生じ「うまく噛めない」という状況をつくっているのです。そこで、歯科医として、歯だけではなく、お口の中やお口のまわり、そして顔全体をケアしていくことで、患者さまの生活を健康で豊かにサポート出来ないかと考えました。歯科医は通常、まず歯や口腔内から患者さんを診ますが、エステティシャンの経験を持つスタッフと組むことで、身体の全体的なバランスからの視点を加え、それぞれの所見を共有して原因を考えていくことができるのです。私自身も、身体の筋肉のバランスから患者さまの症状を捉えるという視点が大切だと感じ、エステティシャンの資格を習得しました。
ものを食べるとき、私たちは、顔にある咀嚼筋を使っています。咀嚼筋は、こめかみ付近にある側頭筋やあごのつけ根付近にある外側翼突筋、頬の横にある内側翼突筋、えら付近の咬筋から構成されており、これらは表情筋の一部を構成しています。咀嚼筋に、皮膚の深くまで浸透する「近赤外線」を当て、またハンドマッサージを施すことで筋肉を揉みほぐし、噛む機能を回復させたり、お顔のバランスを整えたりすることができます。しっかり噛めることは、健康の基本です。噛む行為によって脳の血管が拡張して血液が多く送られ、脳が活動する栄養素が運び込まれて脳が覚醒します。また、噛むことはボケを予防することや胃腸の活発化、情緒安定にもつながるといわれています。反対に、無理な噛み方やバランスの悪い噛み方をしていると、筋肉のバランスが悪くなり、歯ぎしりや食いしばりを助長させたり、顎の痛みや頭痛、肩こりや腰痛を引き起こしたりすることもあります。当院でおこなっているのは、あくまでも医療的なケアであって、美容目的のエステではありません。しかし、噛み合わせがしっかりすると、お顔の表情はびっくりするほど生き生きしてきます。また、このようなケアをおこなうことで、顔のラインがすっきりし、ほうれい線が気にならなくなるなどの副次的な効果もあります。
大きな地図で見る